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Microsoft Teamsの導入・定着・活用の現象学〜アナログ企業の一事例〜

どうも、シブセマサヒロです。

弊社でMicrosoft「Teams」を導入してから、いかに定着し、また活用されていったかについて記述していきたいと思います。

私自身は情シス担当ではなく、管理部門のICT推進担当者として、この件に携わっています。

 

 

環境

弊社

グループ全体で1万人超、派遣社員・受入出向社員も全員Office365を利用しています。

システム会社でもIT会社でもなく、予想に反せず泥臭い世界観が非常に強い会社なので、非常にアナログです。

社内コミュニケーションの主流は基本的にメールかSkype for Buisinessです。

 

Teams周り
  • 外部ユーザー招待機能(ゲストアクセス)は不可
  • Office365以外のサービス・アプリケーション連携は不可
  • MicrosoftのPlannner、Flowも利用不可

拡張性がなく、完全にクローズな環境であることが非常に残念ですが、それがかえって、ただでさえとっつきづらいTeamsに触れる抵抗感を少しでも減じているのではないかというような考え方もできなくはないです。

 

導入初期

1対1のチャットから

Skype for Buisinessが既に活用されていたことから、Teamsでもまずは1対1のやりとりで使われ出しました。

「既にSkype for Buisinessがあるのに、なぜTeamsを覚えないといけないのか」といった批判的な声ももちろんありました。

(こうした反応は至極まっとうで、「Teamsに対し」というよりも、新しいものに対して抵抗感を抱く気持ちは一般的なものです。)

しかし、TeamsがSkype for Businessの上位互換であることが知れ渡り始めます。特に以下の2点です。

  1. 相手の在籍状況を気にする必要がない
  2. 過去のやりとりやファイルが全て記録されている

 

グループチャットへの派生

1対1のチャットしていること、「この話、あの人にも知っておいてほしい」 あるいは「上司へCCしながら、他部署の人に相談したい」といった動機から、グループチャットが使われ出しました。

たしかにSkype for Buisinessでもグループチャット機能はありましたが、それは「参加者が全員在籍している」必要があり、誰かがSkypeウィンドウを閉じてしまえば終わってしまう、非常に刹那的なものでした。

それに対し、Teamsのグループチャットの利点が以下の2点です。

  1. 一度部屋を作成してしまえば、永続する
  2. 後からその部屋に加わった人が過去の経緯を知ることができる
  3. 簡易的な共有サーバー的な利用ができる

 

「部門をまたいで定常的に協業する人たち」の間で、Teamsが重宝されることになります。

具体的には、プロジェクトベースで新規案件の入手対応をしている設計・営業・工事のグループだったり、本社経理部門の担当者と支店経理担当者のグループだったりです。

このフェーズはTeamsの更なる活用、それはつまりチームおよびチャネル機能の活用を準備するフェーズでもありました。

 

そのような成り行きで、現在ではもはやSkype for Businessを積極的に使うことはウェブ会議のときくらいになりました。

 

チーム機能の課題と活用

結論的にいえば、チーム機能の活用のためには、チームのメンバーの組み方をよくよく考えることが最大のポイントであると考えています。

 

大きなチームの失敗 〜中間管理職問題〜

Teamsの導入については、事前のお知らせや利用マニュアルなどもなかったため、情シス担当の見切り発車なのではないか、という印象を多くの人が抱きました。

「Teamsというツールはもらたされたが、活用のアイデアはピンとこない」といった雰囲気は導入初期にありました。

「導入したからには活用しよう」という情報システム部門や(IT音痴気味な)上層部の意向もあったかはどうかは私にはわかりませんが、かなり早い段階で、◯◯本部や◯◯支店いったような、かなり大きな単位でチームが組成されました。

このことはいくつもの悲劇を生むことになります。

 

たとえば、◯◯本部でチームを、支店ごとにチャネルを、といった形で整備されたチームにおいて、九州支店での事故報告を現場は支店に報告したつもりが、本社の役員の目に留まり、おそらく支店レベルで収められる問題であったものが、本社営業が先に客先に謝罪にいってしまい大問題になってしまうという事案が発生しました。

後述しますが、Teamsは組織をフラットなものにする志向をもっています。

先の事案では、中間管理職が順を追って適切に報告をあげていけば、適切な対応が可能であったにもかかわらず、事態を過大に受け止めた上層部が先走ったことによる失敗であったものです。

これを社内では中間管理職問題として認識されています。

 

現在はそうした大きなチームはなくなり、全社的な通知や新技術の提案などは、YammerやSharePointが活用されています。

 

小さなチームの活用事例①   プロジェクトベース

Teamsが1対1チャットからグループチャットへ派生していく中で定着したことは前述しましたが、グループチャットはチーム機能へさらに発展していくことは自然な成り行きであったように思います。

 

社内的な課題としていつも挙げられ、Teamsにより改善されるケースも出てきたのが、設計施工案件における入手フェーズから施工フェーズへの引き継ぎの円滑化です。

入手フェーズでは営業がプロジェクトリーダーとして、設計チームや積算チームを取りまとめ、ファイナンスや契約絡みで特殊な場合は、経理・財務・法務といった管理部門が絡んでいます。

施工フェーズになるや、営業は一線を退き、PMが現場の切り盛りをすることとなる中で、入手時に議論された問題や発注者との交渉経緯が活かされないケースがよくあります。

 

この問題は、プロジェクトベースでチームを組成することにより、施工チームが入手対応時にも事の次第を把握しておける、また、トラブルが発生した際はすぐに入手チームを巻き込める、といった状況が作り出せることにより、改善している案件があります。

 

小さなチームの活用事例②   教育的な観点

Teamsにおけるチャネルは、チームに属しているメンバー全員が見ることができてしまう点に、権限関係の懸念の声が上がったのは事実です。

しかし、チームメンバーが実はあまり関係ないチャネルでのやりとりを見ることができることは、副次的なよい効果を生みました。

若い社員にとって、自分の担当ではない案件の課題、解決方法および意思決定のとり方などの仕事の過程を垣間見することができるのは、非常に勉強になり、かつモチベーションアップにも繋がるようです。

 

 従前までは、若手勉強会などの登壇者が案件対応の紹介でそうしたノウハウの水平展開を図っていたのですが、そうした場合は往々にして、成果や結果の紹介で過程が見えにくく、また、あまり自分の失敗談を語りたがらないものなので、ある意味で「当たり障りないもの」の水平展開に留まっていたと感じています。

むしろ成功事例から得るものも大きいですが、それよりも失敗事例から得るものの方が大きいのは経験的に真です。

チーム機能がもっている、「ノウハウを属人化させない」教育的な効果は企図していなかっただけに、今後の研究課題であると考えています。

 

Teamsへの期待

フラットな組織への志向

弊社は機能別のピラミッド的な組織構成です。

たしかにプロジェクト遂行において、トップダウンで組織が動くことの強みを感じることは非常に多いですが、プロジェクトは往々にして部門横断的になることも多くあります。

Teamsのチーム機能は、それぞれの部門担当者がPMに直接紐付くことになるため、中間管理職を排され、意思決定にかかるスピード感が向上します。

とはいえ、Teamsの活用はまだまだ限定的なため、依然としてピラミッド的な組織で重要視される中間管理職の存在を見直すまでには至っていません。

 

フラット組織もまた決して万能ではなく、正しく機能するためには、メンバーが能動的に動くことが必要になってきます。

多様な情報をすくいあげるためには、大量の情報の中で、何が重要なのかを現場のメンバーが正しく判断して、行動する必要があります。

そうした意味で、弊社のピラミッド的な組織構成の中にどのようにTeamsが溶け込んでいくかは、まだまだ生成途上の段階といえます。

 

オープンマインド 「善意にとる」という行動原理

 もっている情報量が社内での存在感を決定づけることも事実で、それだけにあえて情報を共有しないという秘密主義的な生存戦略を取る社員も少なくないように感じています。

しかし、チームを使い始めてから、プロジェクトメンバーでない方からも、参考になるような過去事例について教えてもらう機会が増えました。

こうした出し惜しみしない文化、換言すれば、「善意にとる」という行動原理が伝播していることは、気持ちがいいものです。

 

まとめ

弊社は古い体質の会社なので、Teamsが既存の価値観とは相容れない要素を潜在させていることは留意すべきことです。

しかしながら、Teamsの導入により、社内のコミュニケーションの形が少しづつ変わっていくことを観察できるのは、私にとって慎ましい日々の歓びとなっています。

ですので、今後も新しい気付き・発見があれば、まとめて記事にしようと思います。

 

参考記事

最後に、社内でTeamsを布教していく上で、非常に参考になったエントリーを紹介します。

小規模な企業での導入事例ですが、小さなチームをいかにして組織するかがチーム機能の要諦であることを示す実例であると同時に、働き方が変わるドキュメンタリーのようで、読み物としても非常に面白かったです。

qiita.com

 

 

次にこれ。

情報共有に先立ち、チームの「状況」を共有し、そこに「情報」を付加していくんだという気付きは、おじさん世代にTeamsに醸す独特な雰囲気的ななにかを説明するときに役立ちました。

qiita.com

 

以上です。

あー、早くFlowとかPlannnerとか使ってがんがん効率化してきたいなー。